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「中国化する日本」

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「中国化する日本」與那覇潤 (文芸春秋, 2011)

著者の大学での講義ノートを書籍化したということで、学術研究の成果というまじめな内容の割りに平易でポップな文体となっており読みやすい一方、悪ノリとも取れるような部分もあって、潜在的ファンを減らしている(損している)かも知れない。

過去1,000年の日本の歴史を、グローバリゼーション(中国化)への動きとそれに対する反動(江戸時代化)の反復で説明しようとする視点は新鮮で面白い。

個人的にツボったのは「人権は封建遺制である」と述べている10章。ここで筆者は「なぜ中国には法の支配、基本的人権、議会制民主主義が欠如しているのか」という問いは正しい問いではなく、むしろ「なぜ遅れた野蛮な地域であるはずのヨーロッパ近代のほうに法の支配や基本的人権、議会制民主主義があるのか」を考える必要があると説いている。筆者によると「西洋型の近代社会を支えるインフラであり、また他の社会と比べてその最大の魅力となっている法の支配や基本的人権、議会制民主主義はもとはといえばどれも中世貴族の既得権益」なのだという。そして宋代以降の中国では特権貴族階級が絶滅したが故に、これらのシステムが発達しなかったのだと説明している。

この指摘は目からウロコだった。この説明については詳しく勉強してみたいが、人権を至上の価値として標榜する組織で働く東アジア出身者として、私もこの点(「人権」というコンセプトをめぐる欧州とそれ以外の大きな隔たり)について漠然とした疑問を持っていたので、この指摘は自分の考えを深めるきっかけになると思う。中国の指導部においてさえ Universal Valueの是非が云々されているけど、それらを人類にとって普遍的な価値として無批判的に受け入れるのではなく、その成立の歴史的背景をもっと深く洞察する姿勢と努力が一般の人々にも必要ではないかと思った。

いずれにせよ、刺激的な良書です。おすすめ。

最後に、どうでもいいことだけど、本書のなかで筆者は1931年から1945年までの日本の戦争を「あの戦争」とカギカッコつきで一貫して呼んでいる。なにか理由があるのだろうけど、本書にその説明はなかった。あと「 品格」とか「美しい国」といった、数年前に日本でもてはやされた言辞をとことん揶揄する姿勢には大きな共感を持った。がんばれー。

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Written by Flowllah

January 8, 2012 at 18:37

Posted in 本・書評

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